新聞記者映画の傑作たち

今さら『ペンタゴン・ペーパーズ』観る。

70年代のアメリカを舞台にした映画だけど、確実にいまを描き出す。普遍的ということは、こういうことなんだろう。

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この1年後、同じくワシントン・ポスト紙の記者たちの奮闘を追う歴史的名作『大統領の陰謀』の舞台、すなわちウォーター・ゲート事件が起こる。『大統領の陰謀』はいま観てもスリリングかつ切れ味最高の映画。

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監督アラン・J・パクラは2年前に『パララックス・ビュー』というとても変な陰謀論映画を撮っているのだけど、その偏執狂的な部分が観客には受け入れずらかった。しかしウォーターゲート事件は陰謀が現実となってしまった。大統領が敵対する民主党に盗聴器を仕掛けようとしていたのだ。

現実がフィクションの陰謀論を越えてしまった。大統領が本当に陰謀を企てていたのだ。そうして監督パクラは最高の題材を得た。前作『パララックス・ビュー』で見せた、執拗に真実を追う姿勢をワシントン・ポスト紙の記者2名に託し、地味かつ丁寧な取材攻勢をパキパキとした歯切れのいい展開で見せていく。傑作だ。

現代、日本。報道記者はこの映画を観てるだろうか。観ておきながら、いまの姿勢、自分自身を許せるだろうか。忘れたふりして権力におもねっているのだろうか。

それにしても、映画のいちジャンルとしてある新聞記者ものの心地よさよ。『ペンタゴン・ペーパーズ』『大統領の陰謀』はもとより、たとえばアカデミー作品賞を受賞した『スポットライト』もそう。こちらはカトリックの神父を告発する傑作。

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また、日本でももちろん傑作はあって、たとえば『クライマーズ・ハイ』。日航123便の墜落という世界最大の飛行機事故を取材する新聞社の人間模様、葛藤、そして叫び。大傑作になりかけた傑作。原作を読むと映画版はテーマ性にブレがあったり、原作にないエピローグがあったりなどなど、気になるところはあるけど、それでも役者同士のぶつかりあい、怒鳴りあいは日本映画史上屈指だと思う。

ということで、願わくば現実の新聞記者たちも、このような映画のように、権力や巨悪に立ち向かう人たちであってほしいと思うしだい。

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