グラナダ版&NHKの露口ホームズの吹替が最高

ホームズの映像化といえば昨今はカンバーバッチ版『シャーロック』あるいは新作が延期になったロバート・ダウニーjr版だろうけど……

なんといっても真打ちはやはりグラナダTV版『シャーロック・ホームズの冒険』だろう。ホームズ演じるのはジェレミー・ブレッド。見たこともないのに、まさに生き写し!と思ってしまうほど。憑依とはこのこと。

日本ではNHKが吹き替えで放送していたバージョンが大変よくできていて、放送時間の関係から一部(といっても数分だが)カットしていて、それが間延びをなくしサクサク進む爽快感を生んでいる。そしてなにより吹き替え!

ホームズの声を露口茂があてているのだけど、これが、これこそがホームズ。つやがありメリハリのある声音、ともすれば芝居がかったと言われそうだけど、そういう誇張すらもホームズを感じてしまう。

またこの版の特色として、ホームズとワトスンの友情を深めて描いているという点も強調したい。原作でも「君以外に友人はいないよ」(『五つのオレンジの種』)と言うホームズ。つまり、唯一無二の友がワトスンなのだ。

そうしてグラナダNHK版の吹き替えのとあるセリフ。『ブルースパーティントン設計書』にて。海軍潜航艇の設計図が盗まれてしまう事件の一幕。ホームズは国家や依頼主の願いを叶えるべく、容疑者宅への不法侵入を企てる。違法な捜査だ。危険もともなう。しかし見張りが必要だ。やってくれそうなのは、ただひとり、唯一の友だ。

 

「いかねばならいよ」

 

ホームズのその言葉に、ワトスンはしばし考え……ニヤリと笑う。そこでホームズのセリフ!

 

「I knew you wouldn't shrink at the last.」

 

機械的に直訳すれば、「君が最後には尻込みしないと、僕は知っていたよ。」

字幕では「そうくると思っていた!」。このセリフもまあいいが、露口ホームズのセリフはどうだ。

 

「それでこそ我が友だ!」

 

最高じゃないか。

 

追記。

直後ワトスンは給仕が持ってきた酒をクイッと飲み干しホームズを追う。ここにセリフはないのだけど、なんと吹き替え版ではオリジナルで「気付けに一杯」とワトスンは言う。間延びいないよう、タイトなシーン終わりとなっている。見れば見るほど味のある物語なのだホームズシリーズは。