アンゲロプロス病患者の独白
どういう病気かというと、暑くなると無性にテオ・アンゲロプロス監督作品を見たくなるという、ほとんどどうでもいい、人畜無害の病気だ。
映画が芸術と娯楽ならば、そのバランスのもっとも端の、極限までに芸術的なゆえに娯楽性すら感じさせるテオ・アンゲロプロスを僕は見たい。
だけど。DVDのテオ・アンゲロプロス全集は全4巻で1巻平均17000円とはどういうことだ。買うなということか。見るなということか。
バラで売ったら採算が取れないのはわかる。一部の作品しか買われないだろうことも良くわかる。だが17000円のDVDを買うのはけっこうマニアだぞ。きさくに、テオの映画でも見てやっか、とはならないぞ。
DVDを買って、作品を隅から隅まで、ヒダのヒダまで、骨の髄まで楽しめる人と、夏の暑い盛りに蜃気楼しか見られない人の差は大きい。大きすぎる。このアンゲロプロス格差をどうするのか。頼むから何とかしてほしい。せめて1万円を切ったら何かの間違いで買うかもしれないし、僕も夏の暑さとシナリオのめまいとで買うに至るかもしれない。いやむしろ買わせてほしい。めまいを起こさせてほしい。
だけど今日、僕はDVDコーナーでテオ・アンゲロプロス全集を眺め手に取り感触を確かめ臭いを嗅ぐことしかできなかった。