何も起こらないという事件

ブッツァーティの第3長編『タタール人の砂漠』。

ブッツァーティは「7階」とか短編が有名で、イタリアのカフカと呼ばれる幻想的、神秘的な作風。イタリアのカフカ、とか聞くと読まずにいられない。

さてこの話、ほとんど何も起こらない。辺境の砦に赴いた新任の将兵。ついたその日から町に帰りたいと願うが、月日がたち、4ヶ月がたち、数年がたち、いつの間にか数十年以上、その砦を守ることになる。

その間、砦の向こう、砂漠の彼方から襲ってくるであろうタタール人を待ち続ける。

という、確かにカフカ的な世界。その数十年の間、事件らしきことはほとんど起こらず、よくこれで300ページ以上の小説にできたなあと。

北方のタタール人をひたすら待ち続けた主人公の運命は……これが面白いんだな。