渡辺謙>志村喬


許されざる者』観た。冬の北海道をよく撮れている。

イーストウッド版と違うところは、ラストのアクションシーンへの動機付けを明瞭にしたところ。佐藤浩市演じる警察署長との対決なのだけど、イーストウッド版ではどうしても、この人そんなに悪いか? という疑念がやっぱりある。

で、今回の邦画版はそこのところへの持っていき方を丁寧に描き出しているので、そういう疑問は生まれない。

ただイーストウッド版にある、物語全体に漂う神話性というか伝記性はない。イーストウッド版にはオープニングとラストテロップがあって、それが神話性を生み出し、この映画は西部劇というジャンルそのものを語っていた。

邦画版はオープニングにテロップがあるものの、ラストはストーリーそのものが変わっている。まあ、そこを描こうという趣旨じゃないんだろう。

昨今の安っぽい映画とは違い、わりと残酷描写もありつつ、重い鈍器で殴られたような鈍い余韻を残すあたりは、李相日監督の前作『悪人』と通じるものがある。

もしかして、黒澤明のちゃんと面白いリメイクを出来るのは今、この人なんじゃないだろうか。

李相日版『七人の侍』……どうだろう。ちょっとは不安が残る? 役者の問題が大きいかもしれない。渡辺謙はまだ勘兵衛をやるには若すぎるのか?

と思って調べてみたら、『七人の侍』の時、勘兵衛を演じた志村喬49歳。あれ、意外と若いぞ。で、今、渡辺謙54歳! あの時の勘兵衛よりも歳とってるんだ……。

ちなみに当時の三船敏郎は34歳。今でいうとオダギリジョー37歳、香取慎吾36歳、藤原竜也31歳、松田龍平30歳、とかとか。

黒澤明は当時44歳で、李相日は今39歳だ。5年後、どうなるか。

余談だけど、主人公たちに復讐を頼む女郎たちの役を札幌の女優が演じている。女郎ズというらしいが、好演している。北海道の雪によく似合う。

雪と言えば、イーストウッド版もそうだったのだけど、傷ついた主人公が回復してすぐ、雪のある外で会話する。それに渡辺謙はおにぎりまで食べる。

北海道で、冬、外でおにぎりを食べることは、冬山登山かスキー遠足以外は、まあ、ない。画的に室内じゃないというのはわかるけど、気になるんだなあ。