ル・カレ成功の秘密
- 作者: ジョン・ル・カレ,宇野利泰
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/05/01
- メディア: 文庫
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第3作にして出世作『寒い国から帰ってきたスパイ』をこの機会に再読。アメリカ探偵作家クラブ賞、英国推理作家協会賞受賞の傑作だ。
のちのちの、スマイリー3部作に代表されるような、ネチネチ積み重ね系の物語ではないので、大変読みやすく、ル・カレ入門には最適。
1作目『死者にかかってきた電話』、2作目『高貴なる殺人』で芽が出なかったル・カレが、この本で一躍人気作家になった理由は、ミステリー的ひっくり返しがとても上手くいっている点。
それにもう1つ。こっちの方が重要だろう。本格的なスパイ小説を書いたのだ。前の2作にもスパイは出てくるのだけど、スパイよりもむしろミステリー的面白さを目指していた。
思うに、ル・カレは自分の職業でもあった諜報活動について、おおっぴらに書くことためらっていたんじゃないだろうか。それが、ミステリー的な1、2作目を出してみて、世間の評判がかんばしくないので、こうなったら! と、吹っ切れたんじゃなかろうか。
だから『寒い国から帰ってきたスパイ』はスパイのドキドキ感、ひっくり返し、そして非常性が、ふんだんにちりばめられて、すさまじく読ませる。
で、それまでの作品でもあった、犯人捜しやミステリー的展開が、そこに加わる。
ミステリーと、ル・カレが本職としていっていたスパイ部分の組み合わせは、食べ合わせとして最高だったんだろう。何度でも読み返せるマスターピース。