好きになる才能

授業で短編小説を書いて、全員で読んで、全員で点数をつけた。読んだ作品の点数を10点満点で別用紙に書いてもらい、集計したところ、興味深い結果が出た。

面白い作品を書く人ほど、他人の作品への評価が高いのだ。他の学生にわからないように集計したのだけど、表にしてみると、点数が多くついた作品を書く人は、他人の作品にも高い点数をつけていた。

例外として、高い点数をもらいながら、他人へは辛口評価だったのが1名。その逆に、低い評価だったのに他人へは高い評価だったのが1名。しかし、その他の10名は、(ほとんど)高い点数を得た順に、他人への点数も高くつけていた。

この結果からわかることは、面白い作品を書ける人は、何かを好きになる感度が高いということだ。プロは作品に厳しく、辛辣に評価するというイメージがあるかもしれないけど、それはすごく一面的で、実のところ、いろんな好きなものを集めたら、好きなものの数や合計ポイントは、一般の人より格段に高いはずだ。

だから、好きになるのも才能なんだと思う。たしかに、思い起こしてみれば、面白いものを書く(作る)学生は、好きなものが多い。逆に、面白いものを書けない(作れない)学生は、何かに没頭したり熱中したり、好きなものをとことん好きになることが少なく、その数も少ない。

授業で、まあ、面白い作品を書けるように、やってるわけだけども、いろんなものをとても好きになれる方法を見つけ出せたら、学生は劇的に変われるのかもしれない。でも、その方法はまだ模索中で、そもそも先天的なものだったらお手上げなんだけどね。