オースター的偶然

1週間前と同じように、芸術の森へ。今度こそは逃すまいと上映会へ。

だがしかし、今日は北海道マラソン真駒内から芸森行きのバスがその時間出ないとのこと。えっと、上映会の開始時間に間に合いません。

諦めて帰りました。

というのはウソで、諦めかけた時に、同じようにバス停で芸森に行きそびれた60代くらいのおばあちゃんと20代くらいの女の人が……

3人でタクシーに乗りました。

なんかこういう乗り合いナンチャラも初めてで、いろんなこともあるもんだなと。聞けば20代女性は僕と同じく上映会だと。

60代の方は澁澤龍彦スペシャルに行くそうで、芸森入り口で別れ、なんの因果かここで知り合った2人が上映会場に行きましたが、マラソンvsバスの件は知れ渡っているそうで、上映開始時間を送らせますとのこと。なので1時間弱、時間がポッカリ空いてしまい。

こういう時って不思議なもので、別にさっきタクシーに乗っただけの縁ですが、まあ一緒にどっかで座ってましょうかって話になる。じゃあお互い好きずきに時間潰しましょうさようなら、とはならないんだなあ。

なので、どっか適当なベンチに座り、ここで初めて明かされるお互いの素性。えー名前を名乗るところから始まりましたからね。歳は聞かなかったけど。

で、これは面白いと思って、先日もあった、僕の職業当てクイズ。えーその人は僕を見て、陶芸の先生って言いましたよ。俳句、書道ときて、次は陶芸です。なんかパターンが見えてきましたね。

そこで雲を見たり大人びた子供を見たり犬を見たりして話をする。ランダムに割り当てられた人と話すのも意外に面白かもな、などと思っていたらいつの間にか時間がたって、上映会へ。

本日のメインですね。長沼里奈脚本・監督作品「まぶしい嘘」。ここからは真面目に書きますが、丁寧に作られた力作でした。力作と言っても力が入っているわけじゃなく、けっこう自然体なところが多く、そこは見ていてとても心地よく感じました。ストーリーもそれなりに練られていて、今までの長沼作品の中では一番いい作品でした。あーもしかしたら歳をとるということはこういうことなのかもしれないと、彼女が女子高生の時に撮った出世作を思い浮かべてしまいました。あれはやっぱり今でも鮮烈ですが、今回の作品はすごく落ち着いた、映画として何を掴もうとしているのか、作り手として良く把握しているんじゃないかと思いました。だから評価します。でもでも、ヴァイオリンを弾く女がらみの話が不自然だったり、劇中の足音がうるさくて残念だったり、カメラの不安定さなんかもあったりして、まだまだ良くなると、まだまだ可能性を期待させる映画なのだと、甘めですが、そう思いましたよ。

上映が終了して帰る段になりましたが、タクシーで知り合った女の人が隣の席だったので、なんか話しながら会場をあとにして、芸森入り口まで降りていって、彼女はしばらく芸森の中を散策するとのことなので、バス停まで送ってもらっていたら、バス停にはなんと、タクシーで一緒だった60代女性が。ちょうど澁澤展を見終わったあとということで、行きのタクシーの3人がまた、帰りにも出くわすという、なんでしょうこのオースター的偶然。出来すぎていて話にはできませんね。

バス停で20代女の人と別れ、真駒内で60代女性と別れ。地下鉄に一人乗って、連絡先も知らないまま別れることとなったこの3人のおかしさに、なんか妙な幸せを感じてしまう、そんな日曜日だったわけですよ。