『○○トアル風景』(岸田戯曲賞を読む1)

○○トアル風景

○○トアル風景

ここ10年の岸田國士戯曲賞受賞作を買って読んでいる。
今年は2月15日発表。あと数日だ。

で、昨年度の受賞作はなんと3本もあった。
その1本目。『○○トアル風景』(ノゾエ征爾)。

舞台の三方を囲んだ壁にチョークで絵や文字を書き、
それを利用して使う、舞台らしい巧みな設定。

現代にあふれる物や言葉、流行。現れて消えていく物、物、物。言葉、言葉、言葉。面白い戯曲だった。テンポがあって台詞もいい。

チョークで書いていくというのは安部公房『壁』の中の『魔法のチョーク』を思い出させる。そうすると必然、石川淳の序文内の言葉も。

「そこで、壁と壁派の人間が共謀して、四方八方どこを向いても壁だらけ。敵はあくまでも人間の運動を妨害するために、逆襲して来る。(中略)このとき、安部公房君が椅子から立ち上がって、チョークをとって、壁に画を描いたのです。安部君の手にしたがって、壁に世界がひらかれる。壁は運動の限界ではなかった。」

この戯曲も、壁の向こう側がラスト、開かれる。
でも、そこに何があるのか。