『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しお ふる世界。』(岸田戯曲賞を読む2)

昨年の第56回岸田戯曲賞は3作同時受賞。

そのうちの1つ、『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しお ふる世界。』は「マームとジプシー」の主宰で作演出、藤田貴大の戯曲。

3つのオムニバス作品で、『帰り道、』の叙情、『まってた食卓』の人間模様と物語性、『しおふる世界。』の女子高生の瑞々しさとある種の残酷。

個性的なのは、「、」(テン)の打ち方。複数使って間を表現する。
例えば最初の台詞……

「帰り道、、、僕は、、、家に、、、帰って、いる、、、途中、、、」

みたいに。
初めは読みにくいが慣れてくると戯曲のリズムに乗れる。

それと、同じシーンを何度も繰り返す。作者はリフレインと読んでいるが、単なる繰り返しではなく、シーンが積み重なっていくのだという。

同じシーンを何度も読み、別の視点で読み重ねていくうちに、そのシーンが立体的に感じられるようになる。マジック。