リアルとは何か

今日の授業で紹介した新聞記事。これを読んで当時の僕は、すごい、と思った。でもどこかすごいか授業内では理解してくれなかった模様。

昼は質素に、2人でのり弁当 2012.1.12 11:51
 オウム真理教元幹部の平田信容疑者(46)をかくまったとして犯人蔵匿(ぞうとく)容疑で逮捕された元信者、斎藤明美容疑者(49)が、周囲には「1人暮らし」と説明しながら、勤めている整骨院の昼休みには弁当屋で2人分の弁当を購入し、自宅へ自転車で戻っていたことが11日、近所の住民らへの取材で分かった。隠れていた平田容疑者と昼食を取っていたとみられる。

 斎藤容疑者の自宅近くの弁当屋の店長(44)によると、斎藤容疑者は4、5年前から平日の午後1〜2時の間に、弁当を購入していたという。のり弁当(290円)や空揚げとコロッケが入った弁当(390円)など安価な種類を買うことが多かったという。

 平田容疑者が出頭後の今年1月6日には、天丼(390円)と卵焼き(210円)を購入。店員はその際「いつも2人分の弁当を買っていたのに、今日は1人ぶんなのかと不思議に思った」と話している。(産経新聞

指名手配犯と暮らしていた女は、毎日、同じ弁当屋でほぼ同じものを(2人分)買っていた。指名手配犯の男が捕まり、1人になった女は、やはり同じ弁当屋に買いに行く。

普通、おそらく凡百の作家なら、ここで女は男がいた時のように、同じ弁当を買う、という風に書くだろう。男がいなくなったあとでも、習慣、あるいは男の不在を埋めるように。

だけど、真実は違った。いつも290円ののり弁、高くても390円のコロッケ弁当だった女は、1人になったら、いつもよりもちょっと奮発して弁当を買ったのだ。390円の天丼に、210円の卵焼きをつけて。

これがリアル、ということなんだろうと思う。だから僕は、この記事を読んで驚愕した。

この感じが伝わればいいのだけど。