ギャツビー(化粧品じゃなく)


フィッツジェラルド華麗なるギャツビー』の映画化。監督はバズ・ラーマン。『ロミオ&ジュリエット』『ムーラン・ルージュ』。

と聞けば、1920年代、狂乱のアメリカの熱を絢爛に伝える映画、と誰もが思う。事実そうなんだけど、なんだろう、この物足りなさ感。

『ロミオ&ジュリエット』や『ムーラン・ルージュ』にあった熱は、主人公たちのもつ熱だった。でも『ギャツビー』には、主人公の語り手ニックや、ギャツビー自身にも、なんだか、だだ漏れてくる熱があまりない。

そもそも、原作『ギャツビー』も、これはやっぱり悲劇であって、バズ・ラーマン流の熱い話じゃなく、負けた者の話であって、だから儚(はかな)いんだろうなあ、と。

映画はその儚さの部分、特にラストを大幅にカットしてしまい、ギャツビーの**のシーンとかがない。僕はそこがすごく好きだったんだけどね。

それがあるからこそ、映画版でもわざわざ文字を可視化してまで映像化した、「だから夢中で漕いでいる。流れに逆らう舟である。そして、いつまでも過去へ戻される。」という文章が効いてくるんじゃないだろうか。

グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫)

グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫)