23分間で洗脳

23分間の奇跡 (集英社文庫)

23分間の奇跡 (集英社文庫)

ジェームズ・クラベル著『23分間の奇跡』。

この本、1ページごとの行数が少なかったり、右側のページが主に白紙だったり。そうして1つの短編を1冊の本にしている。後半に、原文である英語の文章を収録してまで、1冊にして出版したかったのだ。

おそらく、他のクラベルの短編と抱き合わせて短編集にしたところで、人の目に触れることは少ないだろう。ともかくこの『23分間の奇跡』という短編を、より多くの人に読んでもらいたいがための措置だ。

では、そこまでして世に問おうとした短編はどんな内容なのか。

とある学校にやってきた新任の教師。前任の教師は涙ながら教室をあとにする。この国は(恐らく)戦争に負けたのだ。で、新しくなった体制側の教師がやって来る。

教師は、生徒たちにささやかな疑問をぶつける。忠誠とは何か。そこから徐々に、教師の洗脳が始まる。といっても油断してると、どこが洗脳なのか気づかない。だが最後には、この23分間の授業を受けた全員が、23分前の自分とは別人になっているのだ。

シンプルかつ大胆。古典的名作だろう。

ちなみにこれを原作としたものが、世にも奇妙な物語で映像化されている。生徒たちを変えていく先生役に賀来千香子、というキャスティングも絶妙だ。