ミステリーNO.1!

文藝春秋がまとめた東西ミステリーベスト100。1回目は1985年、2回目が2012年。
日本の1位は年月を隔てたどちらも同じ作品。それが、泣く子も黙る横溝正史『獄門島』。
獄門島 (角川文庫)

獄門島 (角川文庫)

不勉強なせいもあり、また、1980年代を経た僕にとっては、怪奇妖艶ミステリーの金田一シリーズは大衆的で敬遠していたのだけど、これを機会に読んでみた。

なんだ面白いじゃないか(失礼)。

正直、日本の三大奇書ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』の方がその壮大さにおいて好きだけど、でも『獄門島』のいわゆる横溝作品らしい怪かしさ、土着的な日本風土、謎解きの爽快感と、一癖も二癖も三癖もある登場人物たち、そして日本探偵史上燦然と輝くキャラ、金田一(じっちゃん)!

金田一シリーズと聞いて予想する面白さのほぼ全てを網羅した傑作。なによりラスト。この時代設定でしかありえない、パーフェクトな収束感。物語全体がラストの一点に集約していく悲劇性。

ミステリーは文学かという論争があるが、この作品を読んで文学と思わなければもう本を読まなくていい。文学性と娯楽性の頂点を極めた作品。たしかにミステリー古今東西の1位に選ばれても不思議はない。