金田一初登場
- 作者: 横溝正史
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 1973/04/20
- メディア: 文庫
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その勢いで『本陣殺人事件』も読んでみる(ちなみにこちらは東西ミステリー第10位だ)。
『本陣殺人事件』は何で有名かというと、金田一耕助の初登場作品なのだ。といっても、作品内時間でそのまま登場するわけではない。ちょっとヒネった書き方で、後年、事件の起こった村を取材する横溝正史とおぼしき人物による記述という感じ。
その中で、金田一耕助がこう動いたとか、犯人あての際に居合わせた医師の手記を引用したりとか、なんかけっこうストレートじゃない(読んでいて気にならないけど)。
さて内容は、新婚初夜、雪のつもった離れで惨殺された夫婦。家の周りは雪が降り積もり、犯人が出て行った足跡はない。つまり密室なのだ。死の間際、謎の琴の音が響く。まさに横溝正史的世界。
真相はまあ……有名と言えば有名で、実際僕は、これを読む前からオチを知っていた(残念)。
さてこの本、他に金田一モノの中編が2つ入っていて、出色は『車井戸はなぜ軋る』。
これもヒネった記述で、事件の被害者の妹・鶴代が兄に当てた手紙がメイン。その手紙の中で事件について語られ、ついには謎解きまで行われる。この手紙を書いた病弱な17歳の少女が、金田一よりも先に事件の真相をあばくという展開が素晴らしい。
で、その手紙を入手した金田一が、事件にまつわる新聞記事などをまとめ、(おそらく横溝正史だと思われる)この話の執筆者に渡した、という内容(ヒネってるね)。
事件の大きさや面白さから言えば表題作『本陣〜』の方がいいのだけど、鶴代というキャラクターの良さとけなげさに軍配。やはり横溝作品の良さはなんと言ってもキャラクターの造形なんだろう。