あの日のラジオ

ラジオを聴いている。

ラジオはいい。作業しながら聴ける。片付けしながら、朝ぼんやりしながら。

以前は松本人志の『放送室』を聴いたいたけど、全391回を2周してしまった。

なので、今度は『坂崎幸之助吉田拓郎オールナイトニッポンゴールド』(ANNG)を聴いている。

放送室は2009年3月で終了し、ANNGは同年11月から始まった。なんか繋がりがあるようなないような。

ちなみに、ANNGは今年9月30日で終了している。放送室もそうだったけど、終わったあとに初めて聴き始めるラジオ番組というのも味わい深い。当時、話題だったことを、時差があって聴く。そうかこの時はそういう感じだったんだ、という風に。

どちらの番組も、時事ネタをガツガツ話すわけじゃないけれど、さすがに世間を賑わせている話題には時々話が及ぶ。例えば年金問題とか羊水発言とか、相撲八百長疑惑とか。

今聴いている坂崎&拓郎ANNGは、2009年11月30日が第1回で、最初の方からチラホラ、ハワイ話というのがでている。吉田拓郎がハワイ好きで、ファンを集めてハワイに行きたいというものだ。

で、長い月日を掛けて、拓郎本人が旅行代理店に足繁く通い、プロデューサー&コーディネーター的役割までして、いよいよハワイツアーが告知され、6日間で25万円以上のツアーにも関わらず、定員200名が数十分で完売した。

今、ANNGを1回目から順番に聴いていくと、番組内でも日時が近づくにつれ盛り上がりをみせていく。ハワイツアーの当日、2011年3月13日が刻々と迫ってくる。

だけど、僕はもう知っている。経験していている。2011年3月11日だ。

直前の放送は、2011年3月7日だった。第61回の放送。来週は旅立つ前に収録したもので、再来週はハワイでの公開録音を放送すると言っている。

ツアーでは、様々なプランを用意していて、吉田拓郎は妻を連れて、再度の愛を告白するという。歌があって、食事があって、坂崎幸之助のモノマネがあって……高まる期待で、3月7日の放送は終わる。

僕はなんだか、聞きづらかった。3月14日の放送は中止されたことを知っている。ネットにアップされているのは、7日の第61回、その次は21日が第62回の放送となっている。

今、61回以前の放送を聴くと、ハワイへ向けた楽しい、希望に満ちた言葉ばかりだ。

でも、このあと、1週飛ばした62回目の放送はどうなっているのか。

思えばあの日から2年と半年以上が過ぎて。人は次第に忘れていく。慣れていくことは人間のいい部分なのかもしれないけれど。僕たちはいつの間にか慣れてしまった。

3月21日の放送を聴くと、2人はしきりと怖さについて語っている。そうだ。確かにあの日、あの時期、僕は怖かった。今でも揺れている感覚があると番組で言っている。僕もそうだった。

いつまた再び、そういう日々が訪れるかわからない。

改めて、あの日のことを振り返る機会だった。