売れる本の理由

なんか売れてるっぽい雰囲気を書店でヒシヒシと感じる書物、『予想どおりに不合理』。

行動経済学、という聞き慣れない分野の本なのだけど、人はなぜそう行動するのか、ということを、経済と結びつける的なことだ。

例えば、パソコンのデスクトップ上、左にある丸いアイコンを、右にある四角いアイコンまで、いくつも移動させる作業を5分間行う実験をする。

ただし、実験を行う人たちを、3つのグループにわける。

Aのグループは、報酬として5ドルもらえる。
Bのグループは、50セントもらえる。
Cのグループは、研究に協力してほしいと頼んで報酬はゼロ。

さて、どのグループが5分間の作業で一番多くアイコンを運べたか。

一見、一番報酬の多いAグループと思いきや、実は、研究の協力のために報酬ゼロのグループが一番だった。

人間には市場規範と社会規範があって、前者はお金がからむシビアな価値判断をする。一方、後者の社会規範は、人間同士の関係性や共同体の結びつきを価値としている。

つまり、この実験によると、市場規範よりも社会規範に頼った方が、作業の能率が良くなるのだ。

なるほど、確かに友人に引っ越しの手伝いを頼まれて、助けてあげる場合と、友人から、5000円上げるから手伝ってと言われた場合、どちらが頑張れるかというと、意外と無償の協力の方が、その人のために頑張れるような気がする。

というように、この本は、意外だけどきっとそうだろうと予想のつく実験結果と、それが社会(や経済と)どう結びつくかを書いている。

売れる本の感じ、というのは、意外だけど予想できる範囲の内容が必要なんだろう。

それともう一つ、この本の重要なポイントは、読みやすさだ。とかくこういう学者の書いた本は論文調で読みにくく、象牙の塔の住人たちの共通言語で書かれていて、難解な暗号を読んでるようだ。

だけど『予想どおりに〜』の作者ダン・アリエリーは読者に話しかけるように、優しく内容をひも解いていく。そういう低い姿勢も、読者に行為印象なのだろう。

売れるには理由が必ずある。