仁義なき脚本家
破滅の美学―ヤクザ映画への鎮魂歌(レクイエム) (幻冬舎アウトロー文庫)
- 作者: 笠原和夫
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 1997/10/01
- メディア: 文庫
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彼が収集した、ひたすらに面白いヤクザ列伝が『破滅の美学』。
太く短く生きた男たちの生き様と死に様が、壮烈、鮮烈。異常なまでの生き急ぎ感。そんな濃い内容を、名脚本家がリーダビリティー良くサクサク読ませるのだから、たまらない。
はじめ、徳間書店から出たものを、角川アウトロー文庫入りする際にコラムを増補して、2004年にちくま文庫入りしたが今は品切れだ。角川アウトロー版が中古で1000円くらいで買うことができるので、この幻冬舎版がオススメか。
僕はヤクザは嫌いだけど、『仁義なき戦い』は傑作だと思う。その影には、というか立役者はやはり脚本で、笠原和夫だ。
それが証拠に、笠原がかかわった『仁義なき戦い』から『頂上作戦』までは一点の曇りもない傑作だけど、そのあと、笠原が脚本を降りた『完結篇』はやはり精彩を欠いた。
笠原が調べた膨大な広島ヤクザ資料は、太田出版の『「仁義なき戦い」調査・取材録集成』に収録されている。
- 作者: 笠原和夫
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2005/07/09
- メディア: 単行本
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(追記:ちなみに今はKindle板が定価で出てて、いい時代になったもんだ)
- 作者: 笠原和夫
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2015/04/13
- メディア: Kindle版
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笠原がいかにオリジナルのフィクションを入れたのか、それが映画作りになぜ必要なのか。
例えば、『仁義なき戦い 代理戦争』で創造された倉元猛(渡瀬恒彦)というキャラ。この若きヤクザがいるからこそ、物語が締まり、文字通り、ラストも彼がらみで締まる(閉幕する)。
まあ、思えば笠原仁義シリーズの本質は、戦いの中の若者像とも言える。
1作目は、ほぼ全員が、敗戦後の若き日本人だった。2作目の『広島死闘篇』は実質の主役と言える山中(北大路欣也)。3作目『代理戦争』は上記の通り渡瀬恒彦演じる一人の若者。4作目『頂上決戦』は対立によって生き生きとする若者たちと、なんと言っても野崎弘(小倉一郎)の犠牲になる若者像が印象的だった。
そんな仁義シリーズを語る上で欠かせない第一級史料の『調査・取材録集成』だけど、脚本家を目指す人、あるいは物書き業を志す人には、必読の部分がある。笠原和夫が仁義なきシリーズを書いている期間の日記が収録されているのだ。
それを読むと、実質1年に4作も書いた(!)笠原の激闘がよくわかる。脚本家の苦悩と執念、追い詰められる精神状態。
脚本を書くということは、どういうことなのか。