才能

作家志望の学生と、ほぼ毎週、やりとりしていることは以前に書いた(かもしれない)。

2年制生の専門学校で、在学中に作家になる目標があるのだという。
それを聞いたのが昨年、彼が1年生の10月の時点で、今はもう、2年の秋になっている。

つまり卒業まで、あと半年だ。

いま彼は、集大成としての作品作りに取り組んでいて、
僕はそのプロットを読んで感想を伝えている。

だいたい、10月上旬にはプロット完成、11月末に小説を応募するスケジュールなのだが、
プロットは思いの外、難航している。今のところ第5稿だ。

僕は、プロットを読み、感想を伝える。
技術的なことと、精神的なことと。

技術的なことは、いくらでもいえる(かもしれない)。
だが肝心なのは精神だ。

デビュー作に必要なのはゴツゴツとした、その人固有の作家性だと思う。
それはもう、教えようがないというか、他人がどうこう言って、どうなるものでもない。

だから僕は彼にひたすら、小説を読み、映画を見て、それから何かを体験するべきだと、言うしかない。

今日、「メメント」と「ユージュアル・サスペクツ」のDVDを貸した。
どちらの映画も、監督品としては(たぶん)第2作目だと思うが、作家性がよく出ている作品だと思う。
(もちろん、「フォロウィング」や「パブリック・アクセス」の方が原石度は高い)

貸すにあたって、久しぶり見た2作は、今見ると低予算でそういうアラはあるものの、
どちらも、すさまじいほどのトンガリ方をしていた。これこそが作家性だと思う。

この2作から作家志望の学生は何を学ぶのだろうか。

今日、専門学校の授業があった(後期からは毎週火曜日だ)。
授業後、彼のプロットの第5稿について話した。


技術的なことは、いくらでもいえる(かもしれない)。
しかしなんだか、言っても言っても、不毛に思えてくる。

本当に重要なことは、人からは教われないんじゃないか。

今、僕が直面しているのは、
この学生の「才能」についてかもしれない。

才能は、どうしたら教えられるのか。

深い疑問の森の中を、僕と学生はさまよう。

僕に言えることは、小説を読み映画を見て実体験を増やし……なんていう間接的なことだけだ。
(行きの飛行機代は出すから、外国に行って、帰りの飛行機代を稼いでこい、なんて提案もした)

才能。

どうしたら、根元的な才能について、発見したり伸ばすことができるのか。

いま教えている専門学校での講師活動は、来年3月で終わる。
考えてみると、なんと6年も教えたことになる(ホントか?怖いなあ)。

その最後の学期で、一番の難問に出会った。

その難問に答えを出すことができるのか。
結果は、あの学生が卒業する、半年後に出る。