怖い短編集その5

八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)

八月の暑さのなかで――ホラー短編集 (岩波少年文庫)

岩波の子ども向け文庫から出ている海外ホラーアンソロジー
金原瑞人さんの編訳。

とにかくラインナップがいい。

どの話も確かに怖いんだけど、
理論的にわかる怖さの、そのさらに何ステップか先にある、感覚的な怖さというか。

表題作『八月の暑さの中で』も、怖いことは何一つ起こらない。
ただいくつかの偶然と思われる出来事があり、主人公がそれを書いているだけ、という。

それでも、この先に起こるかもしれない、予想される出来事が怖いのだ。

この話は金原氏の翻訳もいい。
同じ話が『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』というホラーアンソロジーにも収められているのだけど、その訳よりも怖さがある。暑さと狂気が良く伝わる。

その他にもこの本にはサキの『開け放たれた窓』やハートリーの『ポドロ島』など有名作も入っているので、怖い話の基本を押さえたい人にも有効。