怖い短編集その15
- 作者: フェルディナント・フォン・シーラッハ,酒寄進一
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/02/18
- メディア: 単行本
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とにかく前作がすごい本だったので、
おのずと期待が高まるけれども、この本もなかなかの秀作。
話の数は前作が11で、今回は15。
1話ごとのページ数は少なくなったけど、話の種類はむしろ前作よりも豊富。
1話目『ふるさと祭り』がもういきなりの作品。ガンッと頭を殴られたような。
4話目『子どもたち』は無垢というのにはあまりも残酷な犯罪の話。
5話目『解剖学』は3ページしかない短い話だけど切れ味良く好きな話。
6話目『間男』はゾッとする。
10話目『鍵』は、お、こんな話も書けるんだ、というテンポがあってストーリーも飛び跳ねてる話。けっこう好きな話。
11話目『寂しさ』は題の通り寂寥感のある話。短く、喪失感だけが残る。
さて14話目『家族』はパタパタと閉じていくストーリー。最後に家族の物語は収束する。ただこの『罪悪』と前作『犯罪』との顕著な違いなのだけど、僕は前作の方が格段にいいと思っていて、それはやっぱり冷酷な犯罪の物語の中に、当事者たちの愛が感じられる作品が多かったから。『チェロ』『ハリネズミ』『幸運』『エチオピアの男』など。この話もそうだけど、なんだかすごく冷めていて実際愛のかけらも感じさせない。それが今作の犯罪の特徴。
15話目『秘密』は最後の話。僕は好きな展開なのだけど、こういう話で末尾を飾る感じが、やはりこれは人々の愛についての本ではないのだなあと思う。
まあでも、出来は『犯罪』の方がいいのだけど、『罪悪』単体でも楽しめるので、シーラッハ次回作も大いに期待。