怖い短編集その15

罪悪

罪悪

『犯罪』のシーラッハ、第2短編集『罪悪』。

とにかく前作がすごい本だったので、
おのずと期待が高まるけれども、この本もなかなかの秀作。

話の数は前作が11で、今回は15。
1話ごとのページ数は少なくなったけど、話の種類はむしろ前作よりも豊富。

1話目『ふるさと祭り』がもういきなりの作品。ガンッと頭を殴られたような。
4話目『子どもたち』は無垢というのにはあまりも残酷な犯罪の話。
5話目『解剖学』は3ページしかない短い話だけど切れ味良く好きな話。
6話目『間男』はゾッとする。
10話目『鍵』は、お、こんな話も書けるんだ、というテンポがあってストーリーも飛び跳ねてる話。けっこう好きな話。
11話目『寂しさ』は題の通り寂寥感のある話。短く、喪失感だけが残る。

さて14話目『家族』はパタパタと閉じていくストーリー。最後に家族の物語は収束する。ただこの『罪悪』と前作『犯罪』との顕著な違いなのだけど、僕は前作の方が格段にいいと思っていて、それはやっぱり冷酷な犯罪の物語の中に、当事者たちの愛が感じられる作品が多かったから。『チェロ』『ハリネズミ』『幸運』『エチオピアの男』など。この話もそうだけど、なんだかすごく冷めていて実際愛のかけらも感じさせない。それが今作の犯罪の特徴。

15話目『秘密』は最後の話。僕は好きな展開なのだけど、こういう話で末尾を飾る感じが、やはりこれは人々の愛についての本ではないのだなあと思う。

まあでも、出来は『犯罪』の方がいいのだけど、『罪悪』単体でも楽しめるので、シーラッハ次回作も大いに期待。