コリーニ事件

コリーニ事件

コリーニ事件

傑作短編集『犯罪』『罪悪』の、フェルディナント・フォン・シーラッハの初長編小説。
前2作はどれも傑作。

『犯罪』レビュー↓
http://d.hatena.ne.jp/ys22ys/20130115/1358264626
『罪悪』レビュー↓
http://d.hatena.ne.jp/ys22ys/20130116/1358344039

さて今回の『コリーニ事件』は、初老の男コリーニが、なぜ見ず知らずの(と思われる)資産家を殺したのか。そのコリーニを弁護することになった新米弁護士の物語。

現役の弁護士が書くだけあって、法曹界の内側は克明。新米弁護士と、対する超辣腕弁護士とのやりとりはスラスラ読めて面白い。

が、この本の最大のポイントは、コリーニの殺人の動機。
ドイツの歴史に食い込む苦いクサビ。この本をきっかけに、法律改正の動きになるなど、本国ドイツではセンセーショナルだったんだろうなあと。

「だったんだろうなあ」なんて書き方をしてしまうのは、やはりその部分に強い思い入れがあるかないか、当事者かそうでないかというのは非常に大きい。

この本のウエイトがその部分にあるので、これまでの『犯罪』や『罪悪』ほどには楽しめない。

でも次作も期待。