SFミステリーの奇作

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

ヒューゴー賞ローカス賞ほか、英米SF賞を総なめにした傑作『都市と都市』。まあね、すごいよこれは。

2つの異なる都市国家が、ほぼ同じ地理上に同時に存在してるという設定。だから、同じ通りに2つの国の住民が行き来している。だけど住民は、互いの国やその国民をまったくいないこととして生活してる。

もうこれだけで半分勝ったようなものだけど、2つの都市国家のリアリティがいい。古めかしく落ちぶれつつある国家と、新興しつつあり力を増す国家。

事件は、ある女性の殺人から始まる。それが2国間にまたがる殺人なので、主人公の刑事が、この互いに無視し合う2国間を行き来して捜査を進めていく。

SF(と言っていいのか?)としても幻想小説としても一級品なのだけど、警察小説としても素晴らしい。主人公の国にいる相棒との関係、そしてもう1つの国に行った時にできる警察の相棒も、はじめはギクシャクするのだけど、しだいに関係が深まり、頼りにしたりするさまもバディものとして楽しい。

オチの意外性も申し分なく、ラストの余韻も物語の広がりを感じる。こういう作品こそ映画化希望。