ゲームという神秘

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

盤上の夜 (創元日本SF叢書)

たかがゲーム、されどゲーム。

第147回直木賞候補作『盤上の夜』。囲碁、将棋、麻雀など卓上ゲームを題材にした6本の短編集。

表題作で、創元SF短編賞山田正紀賞を受賞した『盤上の夜』は囲碁。四肢を切断された女流棋士の数奇な運命。

2作目『人間の王』は、コンピューターにより完全解が解明されてしまったチェッカーというゲーム。これが一番SFっぽい。

3作目『清められた卓』が一番読み応えがあった。幻とされた白鳳位第9回目にいったい何があったのか。牌を読めるという新興宗教の教祖の真実とは。

4作目『象を飛ばした王子』はチャトランガというチェスや将棋の原型となったゲーム。主人公は釈迦の息子。王子にまつわる古代の物語。

5作目『千年の虚空』は将棋。ドロドロの人間関係が描かれるが、将棋内容に関してはほとんどなく、作者は将棋にあんまり興味ないのかな。僕は将棋が好きだけに残念(というか中学生の時にアマ初段になったのだけど、それから全然やらないまま月日が流れ、今はもうホント弱い……)。

最終話は『原爆の局』。再び1話目の登場人物たちの物語。エピローグ的な面持ち。

こういう統一性のある短編集は題材がミソなのだけど、ゲームに特化したのはまったく正解。この感じでもっと書いてほしいなと思ったけど、作者の次作は日本製のホビーロボットに関する短編種らしい。こっちはどうなのかな?

ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

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