村上春樹が3度読んだ傑作

ジョン・ル・カレの代表作、スマイリー3部作。その第1作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』が『裏切りのサーカス』として映画化されて、映画を観て原作も読んだ。
http://d.hatena.ne.jp/ys22ys/20130826/1377528542

で、そうすると、3部作の残りも読みたくなるなあ、というのは以前書いた。
http://d.hatena.ne.jp/ys22ys/20130901/1378047104

で、読みました2作目『スクールボーイ閣下』。文庫2冊で計900ページに迫る大著。さすが、3部作の中核をなすと言われるだけのことはある。

前作で、ソ連の情報部・宿敵カーラによって壊滅的な損害を受けた英国諜報部「サーカス」。今作はその続きから始まる。新たにサーカスを指揮することになったスマイリーは、ソ連からパリ経由で香港に流れる送金を見つけ、反撃を開始する。

香港、カンボジア、タイ、ラオス……湿度の高い東南アジアに潜入する、スクールボーイ閣下こと、ジェリー・ウェスタビー。彼の突き進んでいく強さと、心に残り続ける女性の存在。そして、事件後の視点がたびたび挿入され、そこで予告され続けていた悲劇とは。

村上春樹が絶賛して3度読んだというこの本は、まさしく傑作。小さいエピソードが積み重ねられ、最後の破局へと突き進む。再読する理由は、はじめ語られていた様々なことが、いったい何だったのかを確認する作業ができるからだ。そうか、確かにこの時にアレについて触れていたんだ、と読み直すとわかるそのすごさ。

あんなに面白かった前作『ティンカー〜』がかすむほどの重量感。

スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

追記:
ちなみに『裏切りのサーカス』の続編映画化が決まった模様。でも次は『スクールボーイ閣下』を飛ばして、3作目の『スマイリーと仲間たち』らしい……。