ペンは剣よりも……

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)

結局、ジョン・ル・カレのスマイリー3部作を読破した(それはまた今度)。で、箸休めに『凶悪』を読む。読書の箸休めにはミステリーが最適だと誰かが言っていた。

今、映画が公開中の『凶悪』。その原作本。渾身のルポ、フィクションを越えたノンフィクション、とにかく様々な形容が成り立つ、とても面白く、とても怖い作品。

死刑判決を受けて獄中にいる男が語り始めた、知られざるいくつもの殺人事件。それらを操っていた「先生」と呼ばれる男の存在。

いやもう、巻を措く能わずという古い言葉が、この本にはまさに合う。ジェットコースター並みに読ませる内容。死刑囚の証言を得た「新潮45」の記者が追い始める事件の真相とその過程は本当にスリリング。次第に明かされていく真相はミステリーの謎解きのようだ。

この本は文庫版を買うに限る。単行本の時点では事件はまだ解決していない。文庫版に収録された「最終章」を経て、事件はいちおうの解決をみる。

その最終章が心憎い。読めばわかる。写真が載っているのだ。

どこにでもいる、平凡な男。一見無害に見えるが、連続殺人事件の黒幕、金のために何人もの人間を殺した、凶悪な「先生」の写真だ。

追記:映画も観ました。
http://d.hatena.ne.jp/ys22ys/20131009/1381320580