設定100点のミステリー

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

書店で見るなりすぐ買ってすぐ読んでしまった。ハヤカワポケミスの新刊『地上最後の刑事』。

あと半年で小惑星が地球に落ちてくる。人類が滅亡する日が刻一刻と迫っている中で、警官から刑事へと昇進した主人公は、自殺を偽装した殺人の真相を追い続ける。

ミステリーの謎自体は、すごい大傑作というほどではない。自殺したと思われる男の、首をつったベルトが高級品だということに違和感を感じた主人公は、地道な聞き込みをして犯人を探す。まあ、普通だ。

だけどこの本の白眉、僕が突き動かされるように惹かれた点はやはり、半年後に隕石が落ちて滅亡しようとしてるという設定で、それでもなお事件の真相を探そうとする、その行為にやられた。

そこには、ミステリーにある、なぜ謎を解くのか、なぜ犯人を追うのか、真相を知るという、それ自体の崇高さを描いているような気がしたからだ。

半年後に地球は滅び、もう殺人事件の犯人だろうが偉大な指導者だろうが正義のヒーローだろうがみんな死んでしまう。それでも、犯人を追う。真実を探すその過程。

何かを見極めたい。本当のことを知りたいという欲求が、ミステリーの面白さなんだろうな。