松本清張、橋本忍、野村芳太郎
『清張映画にかけた男たち』を読む。
原作:松本清張、脚本:橋本忍、監督:野村芳太郎という、黄金カルテットをメインにした本。
- 作者: 西村雄一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/11/27
- メディア: 単行本
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橋本忍の脚本は、ストーリーがグイグイ前に進みながらも、回想シーンを大胆に挿入して、物語の厚みになってる。回想を入れてもストーリーが停滞しないところなんか、さすがだ。
回想シーンはストーリーの勢いをそいでしまうので、脚本家的には敬遠したいのだけど、かつて橋本忍は、映画全体が前に進むのなら、回想は回想とは呼ばないんじゃないか、というようなことを言っていた。この映画はまさにそれ。
他にも、野村芳太郎の手堅く粘り強い演出、松本清張がのちに社会派ミステリーと呼ばれるようになる現代性のあるミステリー、黛敏郎のジャジーな音楽、などなど、いいとこづくしな映画。
- 出版社/メーカー: SHOCHIKU Co.,Ltd.(SH)(D)
- 発売日: 2013/01/30
- メディア: DVD
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- 作者: 橋本忍
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/03/01
- メディア: 文庫
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いいところがたくさんある本なのだけど、どうしても気になる点が1つ。著者の自分語りが鼻につくのが残念で仕方ない。
『張込み』のロケ隊が泊まった宿が、著者の実家だったらしく、著者も当時いろいろ見聞きしてたということなんだけど、なんというか、作家がそれを語るというよりは、個人の自慢話的で、本としてのバランスを欠いてる。
作家としての自分より、自慢したい自分の方が優ってしまったんだね。
多くの優れた映画本が、自分を殺して、行間のすき間から個人的な情熱をほとばしらせているので、どうしても、それらと比較してしまう。例えば近年の傑作『黒澤明vsハリウッド』の滅私ぶりなんかは、かえって著者への好感度が上がった。願わくばそうしてほしかったのだけど。
黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて (文春文庫)
- 作者: 田草川弘
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/03
- メディア: 文庫
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まあでも、欠点はあるものの、読んで絶対損はない一冊。映画がまた観たくなる。