ちょっと変な本(その4)

2007年に読んだ、ちょっと変な本(その4)

「百頭女」


有名な「20世紀の奇書」をわざわざ、ちょっと変な本として紹介するのもはばかられるが、ともかく読んだので、まあ。

様々な絵画を切り取って、その上にまた絵画を貼る。つまり自分で書いたものは何一つ無く、他者の作品を分解、再構築して新たなイメージ、価値を作り出したコラージュ作品。


もう、実際に作品を見てもらわないと面白さはわからないだろうけど、実際見てもらっても、なんだかわからないかも……。

とにかく一見、意味不明。絵の下にはキャプションがついていて、例えば……

「血なまぐさい暴動のたびに彼女は、恩寵と真実にあふれて生きるだろう。」


絵は、大勢の兵隊が一般市民(?)に発砲して、人々が血を流して倒れている。その真ん中に、豪華なベッドがドカンとおかれ、その上には半裸の女がいる。

こういう絵が147点。連続(あるいは不連続?)して並べられ、そこにストーリーがあるのかどうかも定かではない。

読み始めは大変苦しい。だけどだんだん、見えてくる。なんども繰り返し現れる同じ素材から、何かの共通点を見いだし始めると、この作家の大きなイメージがうっすらと、ぼんやりと見えてくる。

怪鳥ロプロプ、惑乱、私の妹、百頭女。

慣れてくると何度もこのイメージに浸りたくなる。慣れなければこんなにつまらない本もないだろう。そういう意味で、昨年読んだ本の中で、もっとも読む人を選ぶ一冊かもしれない。