タイムマシンにおねがタイムマシンにおねがタイムマシンにおねが

<前回までのあらすじ>
地方都市在住のシナリオライターSは、主に映像系のシナリオを書いてきたが、ごくまれに舞台の脚本も書いていた。だが、しだいに自分の求めるものと舞台で求められるものの差を感じはじめ、ついに、これ以上、舞台のシナリオを書かないことを決意する。その最後のシナリオとなった舞台が、いま、幕を開ける。


<今回のダイジェスト>
Sは、これが最後の舞台シナリオという感慨もなく、自然に見て、自然に緊張し、自然に見終わり、自然に帰る。帰路、かつての劇団員とコーヒーを飲みながら感想や雑談に花を咲かすが、これについては特別なことはない。強いて言うなら、まだ演劇活動を続けているKの感想が、今までよりも格段に鋭く、論理的で、それが唯一演劇を続けている人間であることの証左でもあるのだが、もう演劇のシナリオを書かないSにはなぜかそれが心地よい。もうひとり、彼もSなので、ここではS田とするが、KもS田も元役者あるいは現役者であって、どちらも過去にSのシナリオで舞台に立った二人であった。ゆえに一瞬、もしもこの二人が今日の舞台に立って、自分の書いたセリフを言ってくれたらどうなっていただろうかとSの脳裏をよぎるが、それは過ぎ去りし過去なのだと、余計な感傷をSはぬぐい去る。Sは、その感傷を捨てたことによって、自分は新しいシナリオを書けるような気になるが、その新しさとはなんなのか、それがわかるまでにはまだ時間がかかるのだろうと、ブログを書きながらいま思っていない。