精神鑑定書
- 作者: 岡江晃
- 出版社/メーカー: 亜紀書房
- 発売日: 2013/05/24
- メディア: 単行本
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付属池田小学校の殺傷事件の被告、そして死刑囚(執行された)宅間守の裁判に提出された、精神鑑定書の全文。
この本を読むと、刑法39条に書かれている心神喪失者や心身消耗者への処罰に関して、考えが変わる。
とにかく、宅間守という人間がどういう人間であったのか、テレビやワイドショーで語られることはほとんどない真実を知るべきだ。
前科11犯とも13犯とも言われるトラブルメーカー。生涯、何らかの問題行動とともに生きてきた。
些細なことでも、ずっと心に残り続ける粘着性。嫌な記憶(ムカつくこと)がずーっと残り続け、どうしてあの時こうしなかったんだろうとか、腹がたった時に、その相手をどやしつけるべきだったとか、そういう思いが何日たっても心を支配し続ける。その結果、通常の生活を送ることすら困難になる。
そこから宅間学が学んだことは、ムカついたらその時すぐに対処するということ。どんな状況であれ、ムカついた人間に暴言を吐き、時には手を出す。だけどそうしないと生きていけない。
こういう人間のため、生涯、まともな人間関係を構築できずに、友達なんか1人もいないし(例外は仕事仲間だった年上の男だけ)、4回もした結婚はほとんど金や安定した生活目当て。
精神鑑定書を読めば読むほど感じるのは、そういう性格(人格?)が、宅間守本人は、どうしようもなかったということだ。ここまでひどいと、本当に自分では対処のしようがないだろう。入院して治療を受けたことがあるが、病状は回復することがない。
こういう人間に、そのまま罪を問うことは可能なんだろうか? それに何の意味があるのだろう。もちろん、被害者にとってみれば、この男は絶対に許すことができない。あらゆる残酷な罰を与えたいと思う。
だけど……それでも考えてしまう。この、自分ではなんともしようのない人格を、罪に問うことはできるのだろうか。